

「だいじょうぶかしら・・・心配だわ。」
川の向こう側に住むおばあちゃんが、風邪をひいて寝込んでしまってから数日たちました。
回復はしたものの、元気がもどらないというのです。
いつも楽しそうに、大好きなお菓子作りをするおばあちゃん。
元気のない姿を思い浮かべると、リコは心配でしかたありません。
「そうだ!おいしゃさんが”りんごは体にいい”って言ってたわ!」
あの甘くてやさしい大樹のりんごなら、きっとおばあちゃんは元気になるはず!
きれいな白い箱に、真っ赤な大樹のりんごを6つ詰めて、可愛いリボンをかけたら、おばあちゃんへの素敵なプレゼントが完成。
リコは上手にしあげたプレゼントの箱を抱えて、おばあちゃんの家へと走りました。
橋を渡り切ったときです。
「あっ!!」
つまづいて転んでしまったリコ。
その勢いでプレゼントの箱が落ち、蓋が開いて、ゴロゴロゴロ・・・・
「りんごが・・・!!」
急いで拾おうとしますが、・・・・ボチャン!ボチャン!ボチャン!!
なんと、りんごはそのまま転がって、川に落ちていってしまったのです。
半分だけになってしまったりんごの箱を持って、リコはとぼとぼ歩きました。
「こんなんじゃおばあちゃんは元気にならないわ。」
とうとう座り込んで泣き出してしまったリコ。


「きみ、どうしたんだい?」
声をかけてきたのは同じくらいの年の男の子です。
リコは泣きながら事情を話すと、箱をあけて、半分だけになってしまったりんごを見せました。
「大丈夫!ちょうどいいものがあるんだ。」
男の子はにこっと笑うと、持っていた黄色のりんごを見せました。
箱の中の赤いりんごと、黄色のりんごを交互に合わせて詰め・・・
「ほら、完成!どうだい?」
リコの気持ちは、ぱあっと明るくなりました。
「赤と黄色のりんごの詰め合わせね!とっても華やかだわ!」
やっと顔をあげたリコのすぐそばには、黄色いりんごをたくさん実らせた大樹がサワサワと揺れていました。
「ぼくはハル。ぼくのおじいちゃんは、この黄色いりんごの大樹を代々守っている”りんご守”なんだ。」
男の子が言いました。
「まぁ!なんて華やかで可愛らしいのかしら。うきうきしちゃう色ね。」
箱をあけたおばあちゃんは、ぽわんとほっぺを赤くしました。
「ありがとう。なんだか元気がもどってきたみたい」
数日後、おばあちゃんからリコに電話がありました。
「ステキなりんごのケーキを焼いたのよ。お友達と一緒にたべにいらっしゃいな」
それは、こんがりあまく煮たりんごがたっぷり入ったケーキ。
上には赤と黄色のりんごが華やかにデコレーションされていて、まるでお花が咲いているようでした。
「赤のりんごも、黄色のりんごも、みんなをしあわせにするのね」
リコとハルは、おいしいケーキでしあわせいっぱいになりました。
