リコのママは洋服のお直し屋さん。

お裁縫が得意で、サイズ直しはあっという間、リメイクだってセンスがいいと評判の腕前です。
いつもにこにこしながら魔法のようにステキな服を仕上げるママ。

でも今日はなんだか違っていました。

「絶対に失敗できないわ!って、ムズカシイ顔をしているのよ。」

さみしそうに下を向くリコ。

ママがそんな顔をしてしまうのも仕方ないのです。
昨日、とても難しいお直しの注文がはいったのですから。

「いつもの笑顔のママに戻ってほしいわ。あんな顔じゃ、お裁縫の魔法も使えないわよ…」

元気のないリコを励ますようにユウが明るく言いました。

「おれだったら、おいしいものをたべれば、あっというまに元気モリモリの笑顔になるぜ!」

フウは相変わらずのんびり。

「ぼくも!あまいものをたべるとホッとするよ~」

あまくてホッとするもの・・・ そうだ!

リコの頭に浮かんだのは、そう、あの「大樹のりんご」。

「ママ、お茶にしましょう!」

疲れた顔をしたママに、リコはあたたかい紅茶を入れてあげました。

お茶菓子はもちろん大樹のりんごです。

りんごを剥いたことも切り分けたこともないリコは、豪快にザクッ!

まっぷたつに切って、半分をママに「どうぞ!」

あまりの斬新な切り方にママは、

「うふふ、こんな風にかじるのなんて、子供にもどったみたいだわ」

ジャクジャクとおいしそうにりんごをかじるリコを見て、ママも思い切ってジャクッ!

「まぁ、おいしい!あまくていい香り。」

その時、ママのほっぺがほんのり赤くなって、にこにこの笑顔が戻りました。

お部屋の中は、りんごのやさしい甘さと紅茶の香りが混ざって、アップルティーのような香り。

・・・

「それからママは、あっという間にレースのワンピースを仕上げちゃったのよ!お裁縫の魔法がもどったのね!」

うれしそうなリコの話を聞いて、大樹のりんごがサワサワと揺れました。