あるところに"山の神様が植えた"といわれる、りんごの樹がありました。
その樹は何十年も大切に育てられ、りっぱな大樹になりました。

「この大樹のりんごをたべると、みんな幸せになるんだよ。」
代々この樹を守っているりんご守のおじさんは言います。

元気な山のこどもたちは、大樹を見上げながらおじさんのお話を聞いていました。

「だからこんなにあまくてしあわせな香りがするのね!」

あたりに漂うりんごの香りにうっとりしながら、女の子のリコが言います。

「蜜がいっぱいで、りんごのおしりが光ってるぜ!うまそうだな」

やんちゃなユウは、光るりんごに触ろうと手を伸ばします。

「見て、見て、りんごの蜜の雨が降ってるよ。・・・うーん!あまい」

のんびりやのフウは、りんごから滴り落ちる蜜の雫を上手にキャッチしました。

おじさんはわらっていいました。

「たべてみるかい?」

こどもたちは、おじさんからりんごを1こずつもらうと、そのいい香りをかいでから丸かじりしました。

ジャクッ!
シャリシャリ・・・
う~ん!!

とってもみずみずしくて、くちのなかはやさしいあまさでいっぱい。
飲み込むと、お花の蜜のような香りが、はなにふうっと抜けてゆくのです。

なんだか心がホッとするようなやさしいやさしい味。

「おいしいだろう。とっても幸せな気持ちになるんだ。山の神様はきっと、みんなに幸せになってもらうために大樹のりんごを植えてくれたんだよ。」
おじさんは大樹を見上げてほほえみながら言いました。

大樹のりんごは、おじさんの話を聞いてうれしそうにサワサワと枝をゆらしました。

「だったら、たくさんのひとにたべてもらいたいわね!」

リコの言葉に、大樹はまたサワサワと枝を揺らして喜びました。